I'm in heaven

ヅカヲタな二十代会社員の日々

私は、止めなかった/金色の砂漠

千秋楽ライビュになんとか滑り込みまして。久々の花組でした。

 

トップになるとなかなか悪役、ヒールはやらなくなるものです。たとえ悪だとしてもそれは敵にとって悪なだけで観客から見ると正義であったり、その理由がしょうがなく思えるものだったりします。

 

今回みりおが演じたギィはトップらしくない役でした。褒めてます。

こういうみりおが見たかった!と思わせてくれるとても、とても難しい役でした。

鬱屈としていて、でも繊細で、鋭利で、脆くて、弱くて…

みりおのお芝居が存分に堪能できる役でした。

 

 

私はとくにみりおの目が好きです。

 

タルハーミネに結婚するのですか?と尋ねてから、お父様の中で決まっていることだものという返答を聞いた時の目。切なくて、でも恋慕の入り混じった目でした。

 

そして自分の出自を知って母を詰る時の表情。憎しみではなく、大きすぎる悲しみと絶望の入り混じった瞳、そして徐々に復讐に燃えてゆく。

 

今、この瞬間にみりお以外にこの役を演じきることのできる人が思い浮かびません。祐飛さんもとても似合いそうな役だなぁと思います。

 

ラスト、母が塔から飛び降りたと聞かされた時、ギィは最初理由がわからず戸惑いの表情を見せていました。

しかし泣きながら彼は悟りました。母もまた、自分と同じく心と身体がばらばらになってしまいそうな愛を抱いていたことを。

 

全てを手に入れ、復讐を果たしたギィが何故砂漠へ向かったのか。

憎しみの愛でもいい、力ずくで手に入れた愛でもいい、と思っていた彼の背中を押したのは母の死なのかもしれません。

 

そして彼は全てを捨てて砂漠へ。

タルハーミネを愛し始めたその瞬間から聡い彼はふたりの終着地が砂漠だと気付いていたのかもしれません。

 

幼い頃、二人で砂漠を彷徨った時には彼の心にはまだ恋というものしか宿っていなかった。

恋はギィにタルハーミネの頰を張らせ、生きることを続けさせました。

 

しかし愛がギィの胸に宿った時、

その愛はタルハーミネの心を抱き、ただ死へ向かうようにとギィを誘いました。

二人の愛は生の内にはないと、ギィは最初から知っていたような気がします。

 

 

 

 

タルハーミネ。

彼女の愛はとても難しい。しかし彼女が唯一愛したのはギィであることは疑う余地がありません。

 

彼女の感情は複雑ですが、揺らぐことはありません。花乃ちゃんにこんな難しい役を振るとは、さては上田先生、結構なエスですね?笑

 

幼い頃から自分付きの奴隷としていちばんそばにいたギィを彼女は、土や砂と同じだと言います。

それは彼を見下しているわけではなく、そういう存在だと思っているという、ただそれだけのこと。

彼女は幼い頃から孤独だったように感じます。この孤独というのはギィと二人きりであるという孤独です。

彼女がもっともっと外の世界のことを知ったら、この物語は全く違う展開になっていたと思います。

しかし彼女はあえて外の世界を知ろうとせず自分たちの世界に閉じこもっていた。二人きりの孤独こそ彼女の唯一生きたいと思う世界だったのではないでしょうか。

二人きりの秘密、二人きりの傷、二人きりの寝室。

 

何故、お前なんかを愛してしまったの。

 

これは後悔の言葉ではなく、自覚の言葉だと思います。

 

もっと違う愛し方をしたかった。でも二人は互いに憎しみの中で思い合うことしか出来なかった。憎しみの中で純化された愛を送り合うことしかできなかった。

 

非常に対照的なのがビルマーヤとジャーです。二人は慈しみの人。しかしお互いが優しすぎた故に愛は愛のままではいられなかった。

 

この二人の穏やかで優しい姿があるからこそギィとタルハーミネの愛が際立つのだなと思います。

 

しかしキキちゃんはいつの間にこんなに良い青年に育ったんですか。

ビルマーヤを愛するが故の少し寂しげで優しい笑顔に何度心を撃ち抜かれたことでしょう。

 

ラスト、ギィに向かってどこへ行ったのか、

タルハーミネに向かって金色の砂漠は見つかりましたか、と問う姿。

激しさはないのに悲しみがじわじわとベールを下ろしているような。

 

 

 

全ての始まりであり、最後の引き金を引くことにもなったのは、

ジャハンギールとアムダリヤの愛でしょう。

 

冷酷で勇敢な王、ジャハンギール。何も恐れず、負けを知らず、全てを望むままにしてきた。

 

そんな彼が唯一自力で手に入れることが叶わず、二人の子供の命の代わりに手に入れたもの。

それが前王の妃アムダリヤでした。

 

 

ジャハンギールが動ならばアムダリヤは静。

 

 

タルハーミネとは対照的な彼女が愛したのは、自らの夫を殺し、我が子を奴隷に落としたジャハンギールでした。

あれだけ自信に満ちたジャハンギールがタルハーミネに対するときだけはいつもの高圧的な態度がほんの少し弱くなっていたような気がします。

力ずくで妃にはしましたが、心までは自分のものになっていないと知っていたジャハンギールは恐々とガラス細工にでも触れるようにアムダリヤを愛してきたのではないでしょうか。

 

アムダリヤ付きの奴隷であるピピはアムダリヤの最後を語るとき、

あの方の全ての感情をそばで見守ってきた、と言いました。

 

人間の感情は決して一定ではありません。

かつて愛したのは確かに前王でしたが、その前王を失くした悲しみを全てではないけれど埋めてくれたのはジャハンギールだったのではないでしょうか。

 

しかし彼女は自身が誇りを捨ててまで生き延びさせた我が子に詰られました。

 

何故、誇りを守らなかったのか、と。

何故、死を選ばなかったのか、と。

 

我が子が父親の仇をうち、

その仇がそうしたように親族の命と引き換えに我が妃になれとタルハーミネに迫ったとき、アムダリヤの頭にはかつて、自分がそう迫られた時のことが蘇ったでしょう。

お姉さまがそんな奴の妃になる必要なんかないわ!誇りを捨ててはいけないわ!と末妹のシャラデハがタルハーミネに叫びます。

アムダリヤの時にそう言って止めてくれた人はいたのでしょうか。

頷くタルハーミネに自分の姿を重ねたのでしょうか。

 

ピピは言いました。

私はアムダリヤ様が飛び降りるのを止めなかった、と。

 

セリフも出番も少なかったですが、次期トップ娘役のゆきちゃんがこのお役をやりきったこと、本当に頼もしく思います。

ジャハンギールとアムダリヤでサブストーリー作れるよ、上田先生…。

 

 

ところどころの粗はあるものの、

観劇後に考察したくなるのは、登場人物たちの感情を探ってみたくなるのは

もしかしたら星逢以上かもしれません。

 

もう一回くらい見たかったなぁー。

 

今週末はムラでみりおんサヨナラ始めてきます